【特集】宮崎駿作品の隠れ名作をピックアップ!
宮崎駿作品の隠れ名作ということだが…、有名すぎて隠れられないだろ。
まあそうなんですが、そうは言っても意外に観たことない人が多そうな作品ってあると思うんですよね。
既に活躍年代が半世紀近くに及ぶからなあ…
そうなんです。宮崎駿氏の古めの監督作・演出作については若い人にとっては新鮮かもしれないですよ!以前より旧作が動画配信サービスの普及で観やすくなったので、気になった方は是非観てみてくださいね~!
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『未来少年コナン』(1978)
タイトル | 『未来少年コナン』 | 原作はアレクザンダー・ケイ「残された人々」 |
話数 | 全26話 | TVシリーズなのでじっくり楽しめるぞ! |
放送年 | 1978年 | 1973年に第1次オイルショック、1978年から第2次オイルショックということで「石油危機」がかなり身近な時代背景に。劇中「大変動前のプラスチックごみ」がエネルギー資源として扱われる設定がある。 |
演出 | 宮崎駿 | TVシリーズ全体の演出を手掛ける |
脚本 | 中野顕彰/吉川惣司/胡桃哲 | |
キャラクターデザイン | 宮崎駿/大塚康生 | |
絵コンテ | 宮崎駿/早川啓二/とみの喜幸 石黒昇/奥田誠治/高畑勲 他 | 「とみの」表記のガンダムで有名な現・富野由悠季さんのクレジットも…。 |
作画監督 | 大塚康生 | 大塚康生さんはルパン三世などでも宮崎駿監督と組んでいましたね。 |
美術監督 | 山本二三 | 本作で初めて美術監督を務める。その後『天空の城ラピュタ』のためスタジオジブリへ。 |
音楽 | 池辺晋一郎 | 黒澤明監督作品『影武者』などの音楽も手掛ける。 |
主な声優 | コナン…小原乃梨子 ラナ…信沢三恵子 ジムシィ…青木和代 ダイス…永井一郎 モンスリー…吉田理保子 レプカ…家弓家正 ラオ博士…山内雅人 おじい…山内雅人 | 小原乃梨子さんは『ドラえもん』の旧・野比のび太の声ですね。またジムシィの青木和代さんやダイス船長の永井一郎さんと、錚々たる声優陣であります。 |
来たか…『未来少年コナン』!フューチャーボーイ!
コナンと言えば現在では『名探偵コナン』ですがやはり往年のファンにとってはコナンと言えば『未来少年コナン』。宮崎駿作品としては外せないであります!(あるいはコナンと言えばコナン・ザ・グレートという人もいるかも…)
ざっくりどんな話なの?
原作はアレグザンダー・ケイの「残された人びと」(1970年出版、1974年日本語訳出版)という児童向けSF小説になります。…が、設定・登場人物はある程度引き継いでますが結構話は原作から変わってますね。ストーリーのさわりはこんな感じ。
終末世界ものってやつだね。コナンが主人公で、ラナがヒロインなわけニャ。
大変動前までの旧世界とその後の新世界、科学技術に極度に依存した管理社会とエコロジー的な農業回帰社会、という対比が全体を通して描かれていて、後の宮崎駿監督の映画『風の谷のナウシカ』にもテーマとしてつながっていますね。
旧世界側の生き残りとして「インダストリア」という科学者たちが統率する管理がちがちの都市社会があり、そしてその中枢に「三角塔」という円筒型ビルが3つ三角形に並んだ巨大建造物があります。一方でコナンの生まれ育った島は「のこされ島」(小規模)、ラナの故郷は「ハイハーバー」という島(中規模)です。「インダストリア」「のこされ島」「ハイハーバー」それぞれが大変動後の苦難の時代を三者三様に生き抜いてきた、という状況設定があるんですね。
ふむ、インダストリア、のこされ島、ハイハーバーね。この3つが舞台か。
まあ難しい話はそれとして、アニメとしてどう面白いのニャ。それを早く教えろニャ!!
コナンの野生児としての躍動感
オススメな点はやはりコナンの超人的な身体能力、まさに宮崎駿アニメの真骨頂なシーンのオンパレード、というところですね。
あー、確かにちょっとあり得ないくらいの高さから飛び降りて足がジンジンするだけで済むのかよ!みたいなやつある!
足指のはさむ力どんだけ強いのよ、というのもありますね。
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インダストリアが旧世界の科学技術や武器に頼っているのに対して、新世界の野生児たるコナンはその身体能力を駆使して打ち勝つのであります!持っている武器は銛(モリ)のみ!
乗り物とは何か?という視点
ストーリーは面白いし、人間ドラマはあるし、登場人物の成長や変節が描かれているところも興味深いですね。そしていわずもがな、作画も超絶すごいし、映画と違ってTVアニメシリーズの全26話なのでじっくり展開する重厚なストーリー構成・展開が味わえる、という超おすすめ作品です。宮崎駿監督お得意の乗り物趣味炸裂の飛行機・船描写も素晴らしい。ここもすごいところなんですが、「乗り物」自体にストーリー上の象徴的な意味を持たせている、というところがホントに凄いんです。途中出てくる乗り物はこんな感じ。
乗り物に象徴的意味が・・・!?
種別 | 名称 | こんな感じ |
---|---|---|
大型帆船 | バラクーダ号 | 内燃機関と帆の風力が動力のハイブリッド型帆船。燃料が貴重な世界で重宝されている。海の男、ダイス船長が指揮をとる。船体は茶色。この船はほぼ全編登場してきて、ストーリー上も重要な役目を果たしている。 |
大型船 | ガンシップ | インダストリア所有の大砲を搭載した大型船。帆は無く燃料が必要なため基本的に稼働していない。艦砲射撃がヤバい。 |
沈没船 | 名称不明 | インダストリア近海に沈んでいる大型客船。インダストリアからの依頼をうけて技術者であるパッチさんがサルベージ(海底からの引き上げ)の指揮をとっている。 |
小型船 | 名称不明 | インダストリアに向かうためにコナンがのこされ島で自作した小型船。島にある墜落した宇宙船の燃料タンクらしきものを二つつないだ双胴型。帆もある。暴風雨の際はタンクの中で過ごせるという優れた乗り物。 |
小型飛行機 | ファルコ | …インダストリア所有の小型プロペラ機。前部に機関銃2門あり。ストーリー全編にわたって登場。この飛行機も終盤まで登場し、象徴的な意味を担う。 |
小型飛行艇(&潜水艇) | 名称不明 | 科学者ブラヤック・ラオ博士がハイハーバーに隠していた大変動前の飛行艇。「とても小さなお台所」もあるよ。なんと水中も行けるのだ! |
小型飛行艇 | フライングマシン | インダストリアの地下にあった大変動前の小型飛行艇。茶碗蒸しのお椀みたいなユニークな形をしており、謎の揚力機構で浮遊する。『風の谷のナウシカ』でも似たようなお椀型飛行艇が出ますね。 |
超巨大飛行機 | ギガント | インダストリアが秘蔵する超巨大な飛行機。超磁力兵器を搭載し、戦略爆撃機として最終戦争時に運用されていたもの。多数の砲塔を備え、一度大気圏を離脱すれば太陽エネルギーにより半永久的に飛行が可能。とはいえ始動に膨大なエネルギーを要するため使用されていない。 |
搭乗型ロボット | ロボノイド | 人が搭乗してレバーで操作する、二足歩行型の怪力ロボット。主にダイス船長が使用する。バラクーダ号での荷役作業や力のいる仕事(プラスチック発掘作業等)などで使用される。燃料は不明だがクランクを回して始動し、排煙がでる描写があることから内燃機関で動く模様。 |
けっこうたくさんの乗り物が出るんだね~。その象徴的意味、っていうのがなかなかわからないけど。
ざっくり言うと乗り物自体が旧世界と新世界をそれぞれ象徴しているわけなんですね。未来少年コナンで描かれる乗り物たちは旧世界から新世界への橋渡しする役目を結果的に負っている、という視点で見ることができるのですよ!この乗り物をどう捉えるかという切り口は是非感じ取ってほしいのであります!
なるほど…。ちょっとじっくり観てみないとすぐにはわからない感じだな。
このあたりは本編全話を視聴して味わってほしいのであります!それぞれの乗り物がどういう使われ方をしていき、どう結末を迎えるのか、という視点で観ていると泣けるのですよ!!
\『未来少年コナン』を観る!/
『名探偵ホームズ』(1984)
名探偵ホームズ…。名探偵コナンではなく…。キャラクターが犬化したアニメだよね。
はい、犬化してます。1984年放映の宮崎駿氏がかかわったTVアニメシリーズです。40周年記念として2024年3月22日から当時の劇場版2作が全国劇場公開されます!是非観てみてくださいね~
『名探偵ホームズ』ってオープニング、エンディングもいいんだよニャ~
男女フォークグループであるダ・カーポが歌うOP『空からこぼれたSTORY』とED『テームズ河のDANCE』ですね。楽曲のやさしい印象と本編シーンの再構成されたカットとが相まって何とも言えない英国的でちょっと優雅な雰囲気とユーモアが出ていていいですよね。
要注目回!まずはこれを観れ!
タイトル | 脚本 | 演出・絵コンテ | 作画監督 | 要注目度 |
---|---|---|---|---|
第3話『小さなマーサの大事件!?』 | 宮崎駿 | 宮崎駿 | 近藤喜文 | ★★★★★ この回だけ異常に作画がすごすぎる… |
第4話 『ミセス・ハドソン人質事件』 | 片渕須直 | 宮崎駿 | 近藤喜文 | ★★★★ 珍しくモリアーティ教授の部下スマイリー(普段はやさしい)がブチ切れる回 |
第5話 『青い紅玉(ルビー)』 | 片渕須直 | 宮崎駿 | 近藤喜文 | ★★★★ モブキャラがたくさん動く街描写から光る宝石描写までいろいろ楽しい |
第9話『海底の財宝』 | 片渕須直 | 宮崎駿 | 丹内司 | ★★★★ 艦砲射撃を真正面(望遠鏡越し)から描くシーンは宮崎監督の真骨頂! |
第10話『ドーバー海峡の大空中戦!』 | 片渕須直 | 宮崎駿 | 友永和秀 | ★★★★ 飛行機回。空は泳ぐんです!(平泳ぎ) |
まずはこの5本を観たら大丈夫?
はい、間違いないです。キャラクターデザインは『耳をすませば』の故・近藤喜文さんですね。そのほかにも脚本に『この世界の片隅に』の片渕須直さん、丹内司さんは『天空の城ラピュタ』の作画監督、友永和秀さんは『ルパン三世』シリーズなどで原画や作画監督、と豪華なスタッフですね。ちなみに1984年放映ということでスタジオジブリ設立よりも前の作品となります。
というか第3話『小さなマーサの大事件!?』ヤバくない…?
まず4つピックアップしてもらったけど、最初にどれを観たらいい?
それ聞いちゃいますか…。というか第3話なんですよ。先ほどの表でもわかる通り脚本・演出:宮崎駿、作画監督:近藤喜文という布陣の第3話『小さなマーサの大事件!?』。これはヤバいです。
ヤバいってどういう…
この第3話だけ、常軌を逸した神作画です。明らかにキャラクターのフォルムからしてその他の回と違っています。背景の描き込み密度も異常に解像度高いんですよね…。名探偵ホームズシリーズは背景の描き込みがそもそも高レベルなんですが第3話は特にヤバいのです。
え、キャラの形が違うってこと!?
はい。その他の回と見比べてほしいのですがキャラの顔のライン、特にホームズについては明らかに細部のラインがより犬リアリティを追求したフォルムになっています。目から鼻にかけてのラインがぷっくり膨らんでてリアルな犬寄りなんですよね…。あと若干目つきも不健康そうなところとか…。
なるほど…。
その他にもピンフォールカメラ(本編では「針穴写真機」と呼んでいる)のギミックを使った一連のシーンとか、贋金の検査シーンとか、もう演出が子供向けアニメというにはオーバースペックすぎるアニメーションをしています。とにかく第3話は必見ですぞ!
\『名探偵ホームズ』を観る!/
『ルパン三世』TV第2シリーズ(1980)
以前ルパン三世特集で取り上げたよね。宮崎駿監督が手掛けたTV第2シリーズの回二つだっけ。
ですです。あらためてやはりその2作の超神回については紹介せねばなりませぬ。
- 第145話 死の翼 アルバトロス(演出・脚本・絵コンテが“照樹務”名義)
- 第155話 さらば愛しきルパンよ(演出・脚本・絵コンテが“照樹務”名義)
第145話 死の翼 アルバトロス(1980)
『死の翼 アルバトロス』はどんなん?
この回は宮崎駿監督の飛行機愛が詰め込まれた作品ですね。とはいえ出だしからしてトレーラーハウスでの解像度高すぎる「すき焼き」のシーンとか、ちょっと監督が暴走気味な脚本・演出がヤバいです。
通常のルパン三世で日本的な描写って五右エ門担当って感じだもんね。
五右エ門の場合それはどちらかというと時代掛かった描写なんですけど、この冒頭すき焼きシーンはほぼ現代の日本人の生活、という描写なんですよね。なんでそう描く?という(笑)… あらすじとしては不二子が例のごとく首を突っ込んでルパンが巻き込まれる系の流れです。表向きは航空博物館の館長であるロンバッハ博士は、裏では巨大飛行艇(ドルニエ Do X)を原爆製造プラントにして小型原爆を製造、世界中に売りさばこうとしていて…という感じ。
航空博物館出せば、飛行機いっぱい描けそうだね。
はい、後の『風の谷のナウシカ』や『天空の城ラピュタ』『魔女の宅急便』『紅の豚』『風立ちぬ』と宮崎駿監督は本当に飛行機・飛行船・飛行艇が大好きなんですね…。そんな宮崎駿監督の飛行機愛をがっつり体感できる神回となっております。とにかくアクションに次ぐアクション、宮崎ルパンの特長である「強い不二子」のアクションシーンや、冒頭の生活感あふれる描写、巨大飛行機での空中戦などなど見どころが多すぎて30分なのに1時間観た気になりますぞ!
\第145話『死の翼 アルバトロス』を観る!/
第155話 さらば愛しきルパンよ(1980)
第155話ってTV第2シリーズの最終回なんだよね?
そうなんです。最終回にふさわしいこちらもまた密度の異常に濃い回ですね。冒頭の「1981 TOKYO」のテロップと東京の街並みのシーン。まさに神回を予感させるカッコよすぎる導入であります!
観てるとなんというか、描き込み量もそうだし、街中のモブが結構動いてるのがヤバいよニャ…
そうなんですよね。作画コストを抑えるためにモブキャラは静止しているなんてことが当たり前のところを、ちゃんと必要最低限度で効果的に一部のモブキャラを動かすんですよね。
あと、ガラスとか宝石の描き方も宮崎駿監督らしい感じがあるよね。
ええ、ロボットが宝石店に押し入ってガラスのショーケースを割るシーンとかですよね~。ガラスの反射が割れる直前に不安定に揺らめいてから割れる、という描写が細かくていいのですよ!
描き込みの質も量もちょっと他の回とは比較にならないレベル…
とにかく街の雑踏を描かせたら宮崎監督はヤバいですね。その他にも、ヒロイン声優に後のナウシカ役の島本須美さんであったり、ラピュタに出てきた形のロボット(ラムダ)がでたり、バイクやら74式戦車やらヘリコプターなどなど…おなか一杯な見どころ満載回であります!
むー、やはり『さらば愛しきルパンよ』は必見だな!
\第155話『さらば愛しきルパンよ』を観る!/
まとめ
70年代~80年代にかけての宮崎駿監督がかかわった作品、やはり見逃せないね。
昔はちょっと視聴するのに苦労したものなのですが、現在は動画配信サービスで結構気軽に観れますよね。是非この伝説と言っていい神回たちを味わってほしいのであります!あ、あと実は『パンダコパンダ』(1972)と『パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻』(1973)という短編劇場アニメ2本も紹介したいところだったのですが、長くなったのでまた別の機会に…(監督クレジットとしては高畑勲。脚本・原案に宮崎駿)。パンダコパンダも超面白いよ!
それで…今日ピックアップした宮崎作品、アニメに強いU-NEXTなら結構見放題で観れてしまうな!(2024年3月時点)
フフ…気づいてしまいましたか…